前回の続きで、今回は行政不服審査法改正に伴って改正された行政書士法について書きます。
(前回はこちら【行政不服審査制度改正のポイント その2】
前々回はこちら【行政不服審査制度改正のポイント その1】)
行政書士法改正によって、行政書士にも行政不服申立ての代理権が認められるようになった。そのように言われます。
もっとも、すべての行政書士が、すべての事案において、行政不服申立ての代理をすることができるようになったわけではありません。
まずは、「研修の課程を修了した行政書士」(改正行政書士法第1条の3第2項、以下「特定行政書士」という。)でないと、代理することができません。
また、対象が「行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続」(改正行政書士法第1条の3第1項第2号)に限定されています。
すなわち、『特定行政書士が依頼を受けた許認可等に関する判断に対する不服申立て』しか代理できません。
それでは、なぜこのような限定がなされたのでしょう(政治的思惑は抜きにして)。以下、私の考えを書きます(あくまでも私の考えです)。
まず、特定行政書士に限定されている趣旨は、次の点にあると思われます。すなわち、行政不服申立て手続は訴訟類似の手続であるところ、行政書士はこれまで争訟性のある事案を手がけることが少なかったです。そうだとすると、行政不服申立て手続において適切な主張や証拠提出ができない可能性があります。これでは行政手続に不服のある国民の権利を十分に保護できなくなります。そこで、専門的な研修を受けた特定行政書士に限定することにより、しっかりとした不服申立て活動を行うことを可能にし、もって国民の権利を保障する点に、特定行政書士に限定した趣旨があると思われます。
また、対象を限定した趣旨は、次の点にあると考えられます。すなわち、本人申請をして許認可を得られなかった場合は書類不備である可能性があります。かかる場合、不服申立てをするよりも、不備を直して再申請した方が本人の希望に沿った結果になるし、行政機関にとっても無駄な不服申立ての審理がなされないので、本人にとっても行政機関にとってもいいです。そうすると、かかる場合に行政書士に代理権を認める必要性はあまりありません。また、申請手続きから関与した行政書士が不服申立てをした方が、事案に精通しているので、充実した不服申立てができます。このように、国民の権利を保障する点に、対象を限定した趣旨があると思われます。
主体、対象が限定された結果、行政書士が行政不服申立ての代理権を行使する機会は、そこまで多くならないと想定されます。そもそも許認可等で不許可処分を受ける事案が少ないですし、不服申立てだけ代理するということもできませんから。
それでも、行政書士の業務範囲が拡大したのは事実ですし、申請から申請が不許可だった場合にその後の不服申し立てまで一貫して行政書士ができるようになったのは行政書士への信頼を向上させるのに資すると思われます。
それでは、行政不服審査制度が改正されて、行政書士はどうするべきか。
次回はその点について書きます。
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